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『ディジタル画像処理 [改訂新版]』読了。


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ディジタル画像処理 [改訂新版]

ディジタル画像処理 [改訂新版]

購入してから随分経ちましたがどうにか読了。3D関連など個人的に興味のない項目は流し読みしました。

a244.hateblo.jp

Kindle Unlimited の開始直後は読み放題の対象になっていましたが、この記事を書いている時点では20%ポイント還元です。

私が買ったタイミングではポイント還元はありませんでしたが……。安価に購入できるのは好ましいことですが、これではまるで航空券です。

概要

CG-ARTS協会が実施している検定試験の教科書という位置付け。

読者の知識をどの程度想定しているのか明記されていなにので対象読者は不明。

読んだ感想として、真面目に内容を理解するつもりなら理工系の大学の1、2回生で勉強する程度の数学知識は必要だと思いました。

一通り専門用語を押さえたいとか、ある程度画像処理技術についてイメージをつかみたいという場合であれば文系でも(数式を読飛ばせば)なんとかなるとは思います。

既存の画像処理ライブラリを利用するにしても、ある程度アルゴリズムの名称などのキーワードを知らないとつらいと思います。そのようなケースにうってつけの本です。

出版元のサイト:CG-ARTS協会 | 書籍・教材

目次(章目次)は以下のとおり。

contents
1. イントロダクション
2. ディジタル画像の撮影
3. 画像の性質と色空間
4. 画素ごとの濃淡変換
5. 領域に基づく濃淡変換(空間フィルタリング)
6. 周波数領域におけるフィルタリング
7. 画像の復元と生成
8. 幾何学的変換
9. 2値画像処理
10. 領域処理
11. パターン・図形・特徴の検出とマッチング
12. パターン認識
13. 動画像処理
14. 画像からの3次元復元
15. 工学的解析とシーンの復元
16. 画像符号化
appendix 

また、appendixが充実しています。大学のレポート課題の調べ物に役立ちそうな内容です。欲を言えば2.の数学的基礎を本文に入れるか、バッサリ切って各々の項目の記述を充実させて欲しかった。数学についてはある程度ページを割かないと理解しやすい内容にはならないので、どっちつかずの中途半端な内容であれば無くてもいいでしょう((そもそもフーリエ変換や行列についてはそれぞれ本1冊かけるテーマなのでわかりやすい専門書 を紹介するだけで十分。

1. 画像処理の歴史
2. 数学的基礎
3. 画像入力
4. 画像出力
5. 画像処理の特性
6. 規格
7. 知的財産権

目次の詳細は出版元のサイトを参照

良かった点

  • 全ページフルカラー
  • 説明の図や処理結果の画像が豊富
  • 網羅性の高さ
  • 専門用語の英語表記が括弧書きで記載

大学の教科書用に執筆された専門書はほとんどモノクロですが、本書は画像がカラーです。画像処理アルゴリズムを適用する前と適用後の画像が多数掲載されているのでイメージを 使い見やすいです。

また、細かい点ですが、英語のプログラミング関連のドキュメントを読む場合に専門用語の英語表記を知らないと辛い場面があります。本書はゴシック体の専門用語の後ろにカッコ書きで 英語の訳語が記載されています。

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地味に深層学習など最新のトピックにも触れられています。

残念な点

  • 数式多め
  • 説明が簡潔すぎる項目が多い
  • 固定レイアウト
  • 検索できない
  • 具体的な実装の説明がほとんど無い(ハード、ソフトともに)

数式が多いのは仕方がないとは思いますが、もう少し解説が丁寧だと良かったと思います。どのみち400ページを超えているので、ページ数を抑えるよりは解説が詳しい方が有意義だと考えます。固定レイアウトとはいえ電子書籍版を発行しているのですから尚更です。

検索ができないという点については出版元のサイトにある目次のPDFは検索可能なので、これをダウンロードして見出しの項目名に検索をかければ多少はマシになります。

アルゴリズムの具体的な説明については問題無いですが、 ファイルフォーマットや画像処理ライブラリの詳細については記載が無い*1ので、組み込み系などハードウェアよりのテーマについてはCQ出版ディジタル画像技術事典200の方が詳しいようです。

一点、気になった箇所として、画像がカットされている箇所があったので記載しておきます。

p.330:図14.23 白背景に「この画像は著作権者の意向により表示することができません」という文字のみ

電子化の際に許可が下りなかったのだろうと 思いますが、いったい読者にどうしろというのでしょうか?

まとめ

何でもかんでも検索してしまうご時世ですが、効率良く目的の情報にたどり着くには関連する技術分野やアルゴリズムを結びつけるキーワードを知っているに越したことはありません。

OpenCVなどのライブラリが充実しているとはいえ、どのような場合にどの関数(アルゴリズム)を使うのか、関数の名称やリファレンスから判断する必要があります。

その点、一通りの画像処理関連技術を網羅している本書は課題に対応するキーワードを探すリファレンスとして、また具体的なアルゴリズムを確認するうえでも役に立ちます。


なお、iBooks Storeからも購入可能です。サンプルを確認した限りこちらも固定レイアウトです。

ディジタル画像処理 [改訂新版]

ディジタル画像処理 [改訂新版]

それでは。

*1:JPEGMPEGについての簡単な説明はチャプター16にある

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