今日も微速転進

ここではないどこかへ

Kindle Unlimitedで読んだ本と簡単な書評(2016年8月後半)

9月に入るとコンテンツ数が大きく減少しそうな気配です。課金前に一旦登録解除もありな気がする今日この頃。3ヶ月分くらいは元を取った気がしますが……。

a244.hateblo.jp

前回に引き続きKindle Unlimited で読んだ(または途中で放棄した)コンテンツの紹介と簡単な書評。途中放棄したコンテンツも結構あります。

[2016/09/06 追記] 本のタイトルを見出しにしている箇所は二重かっこをつけるように修正しました。

ビジネス書

『日本が世界一「貧しい」国である件について』

日本が世界一「貧しい」国である件について

日本が世界一「貧しい」国である件について

海外在住の著者による世界労働事情というか文化比較というか。ざっくり言うと海外との比較を通じて受動的な日本の風潮を批判しつつ、海外就職を勧めている本。

女性にしては表現がやや汚い。イギリスのロックバンドに影響されていますと言わんばかり。

4章は大爆笑。著者のキャラが崩壊気味。

気になる点としては異様にドイツに否定的なところ。2013年の本だからでしょうか、最近、IT系でドイツが注目されているという噂と一致しない。

あとは「社会人」、「世間」という日本語に否定的な見解が書かれています。この点は同意です。

『金がないなら頭を使え 頭がないなら手を動かせ』

著者のブログから記事をピックアップしてまとめた本。いわゆるマーケティングのためのWebサイト運営のノウハウからビジネスのアイディアまで諸々。 テレビとネットの溝、紙の書籍と電子書籍の関係などキャズムについての考察は非常に参考になった。

ネット関係で何かやろうと思っている人は一度読んでおいて損はない。

本の要旨から外れてしまうが、Patagonia がシーシェパードに資金援助してたというのはショック。

環境保護云々は抜きにして製品の出来が良くて気に入っていたのに……。

『座右のニーチェ

齋藤孝さんの座右の〇〇シリーズのうちの一つ。同じシリーズもKindle Unlimited の対象になっています(後述)。

このシリーズのすごいところは、紹介されている偉人の言葉に感銘を受けるだけでなく、原著を読もうというエネルギーを分けてくれるところです。

他のニーチェ著作や関連本を読みたくなりました。

この記事を書いている時点では、超訳ニーチェの言葉という本もKindle Unlimited の対象になっています。

難点を挙げるとするなら、著者の好きな文章や映画を自画自賛のごとく賛美する文章が山盛りというところでしょうか。

書く側の自由なんですが。

『夢をかなえるゾウ』

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

小説じたての自己啓発書。かなり有名で前から読みたかったので読んでみた。

率直に申し上げて、関西弁で上から目線は苦痛でした。

なんというかその、キャラづくりのための関西弁って嫌いなんです。上手く表現できませんが、首都圏から見た大阪人のイメージが透けて見えるというか。大阪=関西弁=お笑い、みたいな構図が受け付けないです。著者の意図は知りませんが、おもしろ系キャラすなわち大阪、ゆえに関西弁をしゃべらせる、という思考展開なんでしょうか?

京都や神戸の住人からすると、関西まとめて十把一絡げみたいな感じてしまってイラっとくるだけかもしれませんが。

残念ながら真ん中あたりで戦線離脱しました。合わない人には全然合わないと思われます。なお、続編もあります。

『ファーストクラスに乗る人が大切にする51の習慣』

ファーストクラスに乗る人が大切にする51の習慣

ファーストクラスに乗る人が大切にする51の習慣

元・キャビンアテンダントの方から見た乗客の立ち居振る舞いと、どのような振る舞いが相手にどういう印象を与えるかの解説本。

ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスの比較など。また、キャビンアテンダントならではの豆知識が面白い。

キャビンアテンダントって想像以上に面倒くさい仕事だったのか、というのが最初の感想。仕事のストレスやばそうな感じ。

人間としての立ち振る舞いが相手にどういう印象を与えるかという点で非常に勉強になりました。それと同時にファーストクラスに乗ってみたいと思う反面、 ユーモアと気配りを期待されるとなると気がひけてしまいますね。

靴磨きとか身だしなみはいいとしても。お金払って気配りを要求期待されるならビジネスかエコノミーで耳栓して耐える方がいいような。

『汗をかかずにトップを奪え!』

「頭のいい中高年」の考え方が垣間見える。若いサラリーマン向けのサバイバルガイド。

一言でいうと総論賛成各論反対かな。

なるほどと思う箇所もあるけど、所々このおっさんアホなの?って感じのところがある。一例を挙げると、

一方、こちらは完全な農耕民族だ。自然を相手にする農耕に休みはない。

農閑期というものがあります。また、雪国は冬場はどうしようもないですが…。そして日本の稲作は弥生時代から。労働自体から抜け出そうという発想がないのが致命的な欠陥に見える。

まあサラリーマン向けのヒントは満載ですが、不労所得への道とかではないです……。

『やりたいことをやれ』

やりたいことをやれ

やりたいことをやれ

本田宗一郎さんのエッセイ集。それぞれのトピックは短いので拾い読みする感じ。ちょっと説教くさい。途中でギブアップ…。

また機会があれば読む。

政治・経済

『日本とフランス 二つの民主主義』

ヨーロッパとアメリカ、そして日本の民主主義を比較することで、民主主義の本質を明らかにする名著。ただ発売された時期が古い*1ために取り上げられている話題が古く今の社会情勢とは合わない。

あえて言うなら、日本の民主主義の不幸な生い立ちがよくわかる本。今までの民主主義は何のための戦いだったのかという観点で論じている。

(カナダはともかく)アメリカが宗教の影響力の強さという特殊な事情を抱えているという観点は新鮮。

いままでなぜか市民団体の類に嫌悪感があったが、この本のおかげでその理由を理解できた。市民団体(およびその指導者)の影響力を認めるということは、選挙で選ばれているわけでもない一部の人間が特権を認めることになりかねない。その点だけでも貴重な気づき。

カルトまがいの市民運動ではなく、選挙への立候補などのプロセスが優先されるほうが民主的ではないかな。

技術系

『iOS8開発テクニック集 Xcode6編』

iOS8開発テクニック集 Xcode6編

iOS8開発テクニック集 Xcode6編

Xcode 6が対象(つまり2年前)ではあるが、もうすぐリリースされるであろうXcode 8でもほとんど通用する。

知識としては以前から知っている部分も結構あるけど、使いこなせていない部分が大多数なのでこういう本は非常に助かる。

『ゲームで学ぶJavaScript入門』

ゲームで学ぶJavaScript入門 HTML5&CSSも身につく!

ゲームで学ぶJavaScript入門 HTML5&CSSも身につく!

※リフロー版ただし既にKindle Unlimitedの対象外

残念ながら開始一週間でKindle Unlimitedの対象外に……。とりあえずキープしていたものをどうにか読みました。

サンプルプログラムのダウンロードはインプレスのユーザー登録が必要です(めんどくさい)。個別のプログラムは想像以上に少ない行数で実現されていてすごい。

使用されている画像素材、サンプルともに自由に使えないので本書のコードを流用して何かを作ったりはできないので注意。

内容は悪くないのに……。

ノウハウ系

『翻訳で稼ぐ!』

どのカテゴリに入れるか迷いましたがとりあえずノウハウ系扱いで。 英語講師から翻訳者にジョブチェンジした方による体験談とアドバイスなど。

作業環境のマシンについても書かれているが、意外にハイスペック。

MacBook仕事術!』

MacBook仕事術!

MacBook仕事術!

特に目新しいものはない。とりあえず紹介されているソフトのうち、 Clipy - Clipboard extension app for Mac OS X というツールを導入。システムの安定性に響かないかしばらく様子見。

『接続語を使えば、誰でも書ける 〈型〉で書く文章論』

接続語を使えば、誰でも書ける 〈型〉で書く文章論

接続語を使えば、誰でも書ける 〈型〉で書く文章論

西田みどりさんによる小論文の書き方の本。具体的で実践しやすい。本文に例としてあげられている大学生の書いた文章が多数紹介されているのでイメージがつかみやすい。

他にも同じ著者の書籍が対Kindle Unlimted 象になっています。

〈型〉で書く文章論[改訂版]――誰でも書けるレポート講座

文章表現のためのワークブック

Kindle本を書き上げる技術、ほか』

Kindle本を書き上げる技術: 「書きたいのに書けない」を突破する!個人出版を目指す人が最初に読む本

Kindle本を書き上げる技術: 「書きたいのに書けない」を突破する!個人出版を目指す人が最初に読む本

内容は良いと思いますが、自著の宣伝と見込み顧客?確保のための自サイトへの誘導(ダウンロードにユーザー情報の提供が必要っぽい)があるのが鬱陶しい。

本の企画から執筆環境を整えるまで一通りのコツというかヒントが書いてある。一読の価値はある。

この著者の本自体はクセがなくて読みやすい。ただし、特別なことは書いてない。当たり前のことをちゃんとやれ系。

プロフィール作成術: コピーライターが教える、ビジネスにつながるプロフィールの作り方

プロフィール作成術: コピーライターが教える、ビジネスにつながるプロフィールの作り方

同じ著者の別テーマの本。 こっちは商売っ気が薄くて読みやすい。個人事業主や中小企業にとっては有益。


結構生々しいコピーライター兼ブックライター(ゴーストライターをこう呼ぶらしい)の収入の話。割と参考になる。

中村天風氏に関するもの

天風哲学の人の本。Kindle化されていることにびっくりだよ。Audibleにもあったような気がするけど。実業界に好きな方が多いのでしょうか。

通勤大学文庫 通勤大学人物講座1 中村天風に学ぶ

通勤大学文庫 通勤大学人物講座1 中村天風に学ぶ

はてなのリンク埋め込み機能で詳細データを取るとするとうまくいかないのでリンクのみ。

意外なことに潜在意識の重要性を説いている……。あとはよく聞く「絶対積極」ですね。物事は捉え方次第、みたいなやつ。

knowledge on action is power.

知行合一を英語で書くとこうなるそうな。実にいい言葉。


中村天風さんの本は他にも多数Kindle Unlimitedの対象になっています。

Kindle Unlimited - 中村天風

また、上記の本の著者、松本幸夫氏の著作Kindle Unlimitedの対象になっています。

Kindle Unlimited - 松本幸夫

コミック系

『まんがでわかるアドラー勇気の心理学』

※固定レイアウト

漫画が2ページか4ページあって、その後文章が数ページ続いて…の繰り返し。正直読みにくい。コミックパートはコマ割りが細かくてイマイチ。

コミックパートなくても良かったのでは。もしくはコミックパートは挿絵扱いで本文リフローとか。

途中で戦線離脱。

そのほか

故・岩田聡さんの友人(高校の同級生・同期生)による回顧録。岩田聡さんの高校時代の化学のノートなど、貴重な写真やエピソードだらけ。

小学生高学年の頃からスピーチが上手かったらしい。人徳あふれる人となりがにじみ出ていて、やっぱりすごい人は子供の頃からすごいのだな、と思った。

故人のご冥福をお祈りします。


過去に読んだことのあるもの

紙媒体で読んだ本でKindle Unlimitedの対象になっているものを紹介しておきます。

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

一度読んで満足してしまった記憶があります。

続編も対象になっています。

座右のゲーテほか

高校(高専)の同級生に借りて読みました。かの文豪ゲーテが弟子であるエッカーマンに語った言葉をセレクトして解説を加えたもの。特に10代、20代前半ぐらいの人にオススメできる内容です。

関連本として福沢諭吉に関するものがあります。

座右の〇〇シリーズは手元に置いておきたんですが、Kindle Unlimited は常時端末にキープしておけるのは10冊まで*2なのでちょっとツラいトコロですね。

音楽の定額配信の場合はその場で聞ければOKだろうと思うのですが、1冊読むのに時間がかかる本の場合は勝手が違います。

『フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略』

フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略

フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略

以前、オーディオブック版を聴いてました。分量が多くてハードですが、一読の価値はあると思います。

『人生がときめく片づけの魔法』

人生がときめく片づけの魔法

人生がときめく片づけの魔法

これもオーディオブック版。結局、1年半ぐらいかけて実践しました。自分が本当に好きなもの(正確に言うと何が嫌いなのか)がはっきりしたと思います。

実践するなら半年ぐらいの短期決戦でやらないと効果薄かと思います*3

最後に

さあ果たして来月からどこまでラインナップが変化するのでしょうか。

Amazonの本気度というよりも、大手出版社がどううごくのか、実に楽しみです。


それでは。

*1:紙媒体の発行日が2006年8月15日

*2:図書館もほとんど一度に借りられる冊数は10冊なので同じです。

*3:確かそう書いてあった

CMUの発音記号辞書を加工して使う(IPA風に変換する)

少しは暑さも和らいだ(?)ような感じなのでどうにか怠け癖に決別を。耳の状態の良いうちにリハビリを兼ねてプログラミングネタ。

フリーの発音記号辞書が存在するというのは地味に凄いことではないでしょうか。
内容は見出し語と対応する発音のみですが、約13万項目なので一般的な単語はカバーしているはず。

やりたいこと

アメリカのカーネギーメロン大学Public DomainBSDライセンス*1で公開している英語の発音辞書を活用したい。

The CMU Pronouncing Dictionary

英語版Wikipedia CMU Pronouncing Dictionary - Wikipedia, the free encyclopedia

"Arpabet"という形式になっているので、まずはIPA発音記号*2にしたい。とりあえずはJSONにしておいて、用途に応じて再度加工すればよさそう。

"Arpabet"は下記のようにアスキー文字だけで発音記号を表記する形式。音声認識関係では使われているらしく、機械に優しい形式のようです。

hello HH AH0 L OW1

ちなみに、日本の一般的な辞書や英単語帳の発音記号表記はジョーンズ(Jones)式。

データの取得と変換

リポジトリGitHub - cmusphinx/cmudict: CMU US English Dictionary

猫も杓子もGithubですかそうですか。

SF.net(以下参照)からも取得できるようだが中身が微妙に違う。GitHubの方が新しいのか、記号類が別ファイルになっている。

p/cmusphinx/code - Revision 13228: /trunk/cmudict

準備

GitHubリポジトリからデータを入手する。

$ git clone https://github.com/cmusphinx/cmudict.git
$ cd cmudict

githubからgit clone

ざっくりファイルを確認すると、

cmudict.dict : 辞書ファイル本体
cmudict.phones : それぞれの発音について、破裂音とか摩擦音などの分類表(39行)
cmudict.symbols : アクセントの有無を含めた`Arpabet` のリスト(84行)
cmudict.vp : 記号と読み方(記号1文字に続いて英語読み、その後ろにスペース区切りで発音が記載)

辞書ファイル本体とcmudict.symbolsがあればまずは十分。

方針の検討

まずはcmudict.symbols と、アクセント記号つきのIPAフォントの対応リストを作る。cmudict.vpは今回はスルーする。

WikipediaIPA発音記号とのマッピングが記載されているのでこれに従えばよさそう。

アクセント位置がAH1のように数字で記載されている点を考慮する必要がある。

0 アクセントなし(No stress)
1 第一アクセント(Primary stress)
2 第二アクセント(Secondary stress)

一般的な表記と同じように第一アクセントをアキュート・アクセント 、第二アクセントをグレイヴ・アクセントつきの文字に割り当てる。

それぞれ、U+0301U+0300をを使ってユニコードの合成文字で表現する。

厳密にIPAに合わせるなら、アクセント位置の音節の前にˈ(U+02C8)とˌ(U+02CC)で第一アクセントと第二アクセントを表す必要がある。

また、対応表には存在しないが、長音を示すコロン(三角形のコロン([ː] U+02D0))をオンラインの辞書で使用されている表記に合わせるために追加。 例えばAA[ɑː]にする方が自然*3。 同じ要領でER: 長音を示す[:]を間に挟む([ɜːr])。

注意点など

  • 一部の単語には末尾にコメント('abbrev'やforeign frenchなど)が記載されているので#以降を無視する必要がある
  • アクセントがつく可能性のあるものは、AA0AA1AA2 のようなパターンで、必ず数字がつく。逆に言うとAAという形では登場していない
  • 長音を示すコロンに三角形のコロン([ː] U+02D0)より普通のコロン([:] U+003A)の方がいい?
  • AH(AH0、AH1、AH2)について: Wikipediaの対応表では[ʌ][ə]の2パターン。いわゆる曖昧母音にはアクセントはこないはずなので、AH0[ə]に割り当てる
  • 二重母音で対応する1文字のフォントがない場合、アクセントは最初の文字でいい?
  • 二重母音は対応する1文字のフォントより2文字で表現した方が見栄えはいいかも

暫定仕様ということで。

参考にしたページ

変換

作成したマッピングテーブルはこんな感じ(タブ区切りテキスト)。発音記号を表す英数字とユニコードエスケープをタブ区切りで表記してあります。

このファイルと上記のcmudict.dictを読み込んで逐次置き換えるスクリプトを作成。

Ruby のハッシュを活用して適当に……。発音のバリエーションはキーを見出し語に、IPA形式の発音記号を配列の要素とする。ファイルに書き出すときは適当な区切り文字入れればいい。

To convert the cmudict from arpabet format to IPA ...

cmudictとGistのTSVファイルと上記スクリプトを用意してやればoutput.jsonが作成される。読み込むファイルのパスは決め打ちなので適宜修正のこと。

関連URL

[2016/10/12 追記]

同じようなことをやっている方がいるので参考までにURLを記載しておきます。arpabet-to-ipaというPHPのライブラリで変換表を作成しているのかな。

まとめ

しょぼいスクリプトですがご参考まで。もちろん自己責任で。

あとは用途に応じてRedisに突っ込む、RealmとかCore Data でもなんでもあり。 問題点を挙げるとすれば、品詞によって発音が変化するようなものは対応不能です*4


ついでに紹介しておくと、発音の勉強には以下の本がおすすめです。発音記号は日本式です。

DVD&CDでマスター 英語の発音が正しくなる本

DVD&CDでマスター 英語の発音が正しくなる本

*1:英語版Wikipediaによると途中からBSD ライセンスになった模様

*2:経産省の下部団体ではなくて、International Phonetic Alphabet (IPA)の方

*3:少なくともオンライン辞書はこっちになってる

*4:そもそもcmudictに品詞情報がない

『よくわかる Auto Layout』読了

よくわかるAuto Layout

よくわかるAuto Layout

7月頭にKindle版を購入してようやく読み終えました。他の本読んだりしたのと、暑さにげんなりしていたせいです。

率直にいうと熱帯夜による体調不良とAmazonKindle Unlimitedのせいです。

ほぼ確実に9月某日にXcode 8およびSwift 3が正式にリリースされると思います。本書はXcodeおよびSwift のバージョンの影響を受けるような内容はほとんど無いので購入タイミングについて悩む必要は無いと思います。

概要

なぜか「はじめに」が「だ・である」体の文章でびっくりする。本文は「です・ます」体。

出版社:リックテレコム : よくわかるAuto Layout iOSレスポンシブデザインをマスター

サンプルのダウンロード:リックテレコム 書籍情報

著者さんのブログ:「よくわかるAuto Layout」を執筆した話 - Jeffsuke is not a pen.

目次
Chapter 1 Adaptive Layoutをはじめる
Chapter 2 Auto Layoutの基本概念
Chapter 3 UIViewControllerとレイアウトをサポートするクラス
Chapter 4 StoryboardとAuto Layout
Chapter 5 コードとAuto Layout
Chapter 6 実装基本パターン
Chapter 7 実装応用パターン
Chapter 8 Auto Layoutをデバッグする
Chapter 9 サイズクラスとトレイトコレクション

各章ごとにほぼ独立した内容になっているのでAuto Layout の経験があるならChapter 1から3はさらっと目を通すかスルーして、 Chapter 4から9を読めばいい。コードからAuto Layout を設定しない(Interface Builder派)ならChapter 5は読まなくても大丈夫*1

あるいは、目次と索引を見て興味のあるところから読んで、残りは時間のあるときに読むとか。

良い点

そもそも日本語のAuto Layout の解説書が出版*2されること自体が非常に喜ばしい。

  • それぞれの章で内容が独立している
  • リファレンスとして充分な内容
  • 豊富なサンプル
  • これまでの経緯に触れたうえで具体的な手順を説明している(現在のベストプラクティス)
  • 入門書で端折られがちな、Size Class (トレイトコレクション)についての章がある*3

iOSプログラミングの入門書はiPhoneの縦向き固定でiPad向けの画面レイアウトの解説がない場合がほとんど。Auto Layoutも概念の説明と簡単な例で終わっているケースが多い。

そういう点を踏まえると本書のようなAuto Layoutの本は貴重。

もちろん、インターネットで調べることである程度は解決することは可能。Webサイトの多くは初歩的な内容か特定のトピックだけなので体系的な知識を得るのは難しい。特にiOS関係は古いバージョンについての情報が混ざっていたりして、本当この方法でいいのか判断できずに混乱しがち。その点、この本の場合は「以前はこうだったが最新のバージョンではこうする」というこれまでの経緯を踏まえて説明されているので混乱しにくい。

ちょっとした余談ですが、技術系の本で「あとがき」と「謝辞」がある本は久しぶりな気がする。

気になった点など

  • 内容の関係で説明と図が交互にひたすら続く
  • 固定レイアウトはやっぱりツラい
  • スクリーンショットを大きくできないものか(電子版のみ)
  • 設定済みのプロジェクトデータのみ提供されている
  • 「トルツメ」という日本語は初めて見た*4

スクリーショットを見て、文章を読んで…の繰り返しなので読んでいて疲れるかも。

Kindle for PC or Kindle for Mac で読む場合はサブディスプレイを用意して、片方でXcodeを起動しておくといいと思います。

サンプルコードはXcodeのプロジェクトで、一つのプロジェクトの中に多数の.storyboardファイルという形式。
欲を言えば、設定済みの状態だけではなく設定前のXcodeプロジェクトファイルがあると良かったと思う*5。 また、サンプルコトードは章ごとに分割されていたほうがわかりやすいような気がする。

ページ数の都合もあるだろうけど、一章ぐらいは完全なチュートリアル形式でも良かったかも*6

まとめ

最初から読めばまとまった知識が得られる、リファレンスとしてつまみ読してもいい。リフロー形式か、検索可能なPDFだったら最高だったかな。

Auto Layout はよく分からない、あるいは自作アプリをiPadに対応させていけどSize Classはよく分からないという方にオススメです。また、ひとまず入門書を読み終えて、本格的にiOSアプリを作ろうという場合も買っておいて損はないです。

というかXcodeiOS/Mac向けのアプリをつくるなら必須ではないでしょうか。


それではまた。

*1:読んで損はないし、別に読むなという意味ではないです

*2:KDPではなくフルスペックで

*3:英語の本だとちゃんと説明しているのもあったはず。The Pragmatic Bookshelfのやつとか

*4:どっちかというと校正用語なの?

*5:Storyboardとバージョン管理システムの相性が良くないので難しいのかも

*6:9章はかなりそれに近い内容

書評:『はじめての画像処理技術 第2版』

はじめての画像処理技術(第2版)

はじめての画像処理技術(第2版)

読み終えた画像処理関連の本としては2冊目。結論から言うと画像処理未経験かつ理工系の人間向けの(この分野の)教科書としては良書。

森北出版にはあまり良い印象がないので敬遠してました。だって高専の数学高専の物理高専の化学の森北出版*1ですよ?

高専のなんたらシリーズですが、演習問題の回答にミスがあったりとか色々と良くないイメージがありまして……。最近は表紙がカッコよくなっているみたいでびっくりです。

別の画像処理の本を購入後、こっちの方が良いかもしれないという雑念に苛まされたので両方読めばいいやと思って購入*2

概要

もともとは別の出版社から出版されていた本の改訂版とのこと。電子書籍版は提供されておらず紙媒体版オンリーです。

出版社サイト:はじめての画像処理技術(第2版) | 森北出版株式会社

試し読み用のPDFあり。

出版社側のサポートページとしては下記の模様。現状のところ正誤訂正の情報はなし。

サポート | 森北出版株式会社

今のところ、特に本書については記載なし。

目次は出版社のページ、あるいは上記のPDFを参照。

対象読者など

対象読者は理工系の大学生から高専レベルで、教科書または副読本を目指した、と書いてある。電気系の院卒の人間が読んでも基本概念は十分理解できたので高専情報工学科の3年生か4年生なら問題なく理解出来るはず。

タイトルのとおり初学者向けに基礎概念を説明するタイプの本なので、ソースコードなどは記載されていない。また、対象分野について網羅するタイプの本でもない。

良い点

  • 画像処理の基本手法をグループ分けしたうえで、丁寧に解説している
  • 数式は比較的少ない一方、説明の図が多い
  • 基礎に重点をおいてコンパクトにまとめられている
  • 基礎手法の組み合わせによる応用事例が掲載されている

本書の「はじめに」にあるとおり、基本的な手法の組み合わせの応用による目的の実現を意識した構成になっている。以下、引用。

ある目的のために画像処理装置・システムを新たに構築する際、それが先端的であればあるほど一定レベルの経験と勘が必要になってくる。しかし、これまでに数多くの画像処理手法が実用化されており、これらの中から最適なものを選別しうまく組み合わせて活用すれば、ある程度の用途に対してはよい結果が得られるものと思われる。(p.4)

勘と経験については書いてありませんが、ところどころ経験者ならではの補足情報が書いてあったのは確か。

気になったところ

初学者向けということもあり、濃淡画像(要するにグレースケール画像)、モノクロ画像を中心に説明されている。そのため、カラー画像特有のトピックや3D CG関連については軽くふれているだけで具体的な解説はない*3

数式を用いずに説明している箇所と比較すると、数式が登場する箇所は説明が雑な感じがする*4。図が豊富なのは良いが、図の中にしっかり説明を入れていただきたい。

特にベクトルの説明の図において、どのベクトルが説明しようとしている対象なのか明記がなく文脈と消去法で判断せざるをえない箇所があった。どうも説明の前フリ、前提にしている初期条件の説明が不足気味。

止むをえないのだろうが、応用事例は著者の得意分野に偏っているように見える。どういう理由かはわかならないが、フーリエ変換を使う処理(周波数フィルタリング)は登場しない。
また、ページ数の都合か、やや説明が簡素過ぎる箇所があるように思える。

最近、カラーの技術書を読むことが多いためか、モノクロだと寂しい感じがする。巻頭だけでもカラーページを入れて処理前と処理後の画像を掲載すると良かったのではないだろうか。

まとめ

網羅性はともかく画像処理の基礎概念を理解したい場合にはオススメ。ただし、この本一冊で画像処理系のプログラミングが書けるというような本ではない。

過去記事のまとめでも似たようなことを書いていますが、 OpenCVのような高度なライブラリを利用するとしても、自分のやろうとしている目的に応じて様々な処理を行う関数を組み合わせる必要があります。

どのような場合にどういった処理が有効なのか、既存手法にどういうものがあるのか知っているに越したことはありません。基礎概念を学ぶうえではページ数が176ページ *5で価格も安めなのでちょうどいいかと。

過去に画像処理関係の経験があるか、この分野について網羅的な本が必要であれば過去記事でレビューしているディジタル画像処理 [改訂新版] の方がベターです。 特にカラー画像や3Dまわりなど。

a244.hateblo.jp

それではまた。

*1:高専関係者でないとわからないネタでごめんなさい……

*2:そもそも旧版の評判自体、悪くなかったようなので

*3:言及されている箇所あるが、「本書では解説しない」という但し書きの文章に登場する

*4:数式なしで説明しにくいから数式が出てくるのだろうが…

*5:目次などを除く

Kindle Unlimitedで読んだ本と簡単な書評(2016年8月前半)

Kindle Unlimited のサービス開始から約2週間なので読んだコンテンツを紹介しておきます。

途中で読むのをやめたものについては未掲載です。読んだ時点でKindle Unlimitedの対象だったものを列挙しています。

開始当初から1週間でジャンルによっては対象外になってしまったものがあったり、イメージ悪化が甚だしいですが、割り切って利用しております*1

現時点で定額制の対象外になっているものは対象外と明記していますが、この記事を書いた後で対象外になる可能性もあるので間違って定額対象外のものを購入しないよう注意してください。

[2016/09/06 追記] 本のタイトルを見出しにしている箇所は二重かっこをつけるように修正しました。

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そもそも申し込んでいない方はこAmazonのサイトから。

*1:そもそもまだ無料期間中です

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