企業の不祥事と「優等生の心理学(または、高学歴の人間学)」
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タイトルは最近読み終えた本のもじりです。
購読中のブログに触発されたのでちょっと時事ネタについて書こうと思います。以下のブログでは「強いリーダーシップの弊害」が 指摘されています。
http://sennich.hatenablog.com/entry/2015/07/11/152636sennich.hatenablog.com
今回のような不祥事に場合、役員の交代と再発防止のための組織改革でお茶を濁してで騒動が決着する、というパターンがほとんどではないかと思います。 確かに主犯は経営陣でしょう。しかし、不正行為を認識しつつも上司の指示に従ってしまう一般社員についてはどうなのでしょうか?
末端の一般社員の責任を問えといいたいのではありません。問題にしたいのは彼らはなぜ「No!!」と言えないのか、です。 昨年世間を騒がせた某幹細胞や某社のスマートフォンの品質問題。日本の一流大卒のエリートを集めた組織から不祥事が絶えません。
「人のふり見て我がふり直せ」の諺どおり、他社の不祥事は他人事ではないと各組織とも不祥事防止のための社員教育に余念がないはずです。 それでも不祥事、無くなりませんよね。不正に手を染める経営陣とそれを止めることのできない従業員。
せっかくなので元大手企業の従業員としてこの組織を構成する人間について書いてみたいと思います。
大手企業、上場企業を構成する人々
全員がそうではありませんが、ほとんどが有名大学卒です。創業初期は変わった経歴の人を採用せざるを得ない場合が多いのでしょうが、 大手企業、上場企業は有名大卒の出身者を中心に採用しますから当然の結果です。
さて、比較的狭き門とされる有名大学の学生というのはどういう人間なのでしょうか? 独断と偏見以外の何物でもありませんが、例えば
- 一を聞いて十を知る、宇宙人タイプ
- 要領のいいサボりタイプ(外面は品行方正に見える)
- 真面目な努力家タイプ(内面から品行方正である場合が多い)
のようにざっくり分類できるものとします。ここでは2.および3.のタイプをひとまず優等生として考えます。
優等生はなぜ勉強するのか(なぜ大企業をめざすのか)
そもそも大多数の学生が勉強する動機は何でしょうか? 以下は個人的な見解です。
- 親や先生に怒られるのが嫌だから
- 周囲の期待に応えたい
- 周りから馬鹿にされたくない
- 勉強しないと将来に悪影響がある
- 夢や目標を実現させるため
概ねこんなところではないでしょうか。私の場合は1.、3.、4.だったように思います。5.の「夢や目標のため」というのは残念ながら少数でしょう。
早い話が、親や教師、周囲からの「圧力に屈した」結果、もっと言えば「恫喝に負けた」結果として勉強に励んだ結果、 いわゆる「いい学校」から「いい会社」に入ることになるわけです。
親や教師がうるさいから勉強し(脅しや大声に弱い)、また周囲から馬鹿にされたくない(=プライドが高い、世間体にこだわる)からこそ大企業、上場企業にたどり着くのです。
何が言いたいのかというと、大企業、上場企業の構成員は、プライドが高い&圧力に弱い、ということです。 強引なタイプやしつこい人間に弱い、ということ。
なぜこうなるのか。家では親にしつこくうるさく「勉強しなさい」と言われ、学校に行けば先生からは「どうして宿題をやってこなかったの?』と問い詰められるのです。テストの成績が悪ければ同級生からの嘲笑が待っています。仕方がないので勉強する、そして幸か不幸か行き着く先が東芝に代表される大手企業、上場企業です。
成長とともに「親の言うことを聞きなさい」から「学校では先生の言うことを聞くのよ」と変化し、「上司の言うことを素直に実行するのが当たり前」に変わっていくだけ。
親や教師に刃向かうと面倒なことになる、とりあえず相手の言うことを聞けば相手からの圧力から逃げられるという体験。相手がしつこい、うるさいからしょうがない。これを幼少から叩き込まれて育った結果、習い性のとして目上の人間の言うことに抵抗なく従うようになります。
これでは上層部からの圧力やいわゆる空気に逆らうことがなかなかできません。これは私自身が少なからずそうだったから言えることです。
もう一点、付け加えておきます。優等生というのは圧力に弱いだけではありません。少数ながら「怒られることを異様に嫌がる人」がいるように思います。「怒られること恐怖症」とでも言えばいいのでしょうか。 自分が怒られないためなら、努力を惜しみません。しかし、通常の努力ではどうしようもない、という状況になると不正や脱法行為も辞さないケースがあります。頭がいいので不正であることは自覚しているようです。ですが、抜かりなく証拠隠滅を図るところがポイントです。
出世するのはどんな人?
少し話が横道に逸れますが、サラリーマンの出世の秘訣、聞いたことありませんか?
「出世の秘訣は運・鈍・根」
運は幸運、鈍は鈍感、根は根気とか根性だろうと思われます。他の2つはともかく、他人の気持ちに配慮しないような鈍感な人が出世する、 場合によってはグレーゾーンを強引に突き進むような人のことではないでしょうか。
自然と人が付いてくるタイプのリーダーは稀でしょう。グダグダ言う部下を語気を強め、時に怒鳴りつけてこき使う。そういうタイプがほとんどでしょう。語るのはビジョンではなく売り上げ目標の数値。聞こえてくるのは派閥争いの噂…。
このタイプが不正行為に走った場合、どうなるか。部下は優等生の集まりですすから、上司の意図を敏感に察知します。圧力に弱い優等生には不正と知りつつ上司の指示に逆らうことは、まずできないでしょう。
誰にだって生活があります。住宅ローンに奨学金*1の返済、家族との安定した生活を守りたいはず。まして苦労してたどり着いた大企業です。 誰がわざわざ上司に異を唱えるのでしょうか? 発覚しなければ何も問題ありません。
仮に発覚しても「上司の指示に従っただけです。僕は悪くないんですぅ〜」と言い訳するだけです。
どこかで歯車が一つ狂えば優等生の集団はもろいんです。何かおかしいと感じても、「昔からこうしている」、とでも言われれば疑問を持つことなく仕事に取り組むでしょうから。
本気で再発を防ぐなら
いくら報告書や監査資料を作らせても形骸化するだけです。要領のいい優等生からすれば面倒な作業が増えるだけに過ぎず、要領のいい彼らは物の見事に骨抜きにするでしょう。
本気で再発を防止したいなら、いい意味でワガママ、やんちゃな人間を増やすこと必要だと思います。これは体育会系という意味ではありません。先輩の言うことにはなんでも「ハイ!」というタイプではダメです。自分より職務の上で上位にあたる人間に「No」と言えるためには、 上手にワガママが言える必要があります。
親、教師、そして上司の言うことを素直に聞くということは、逆に言えば自己主張が下手だという前提で、不満があるのにしぶしぶ相手の言うことを聞いているということです。不満があるのにそれを表現できない(=ワガママを言えない)ということです。
日本の教育システム上、我慢や謙虚が美徳であり、自己主張はあまり良しとされません。そもそも自己主張の訓練はしていないでしょう。 学校で成績の良い人間を集めれば集めるほど、強引なリーダーの暴走を止めることはできない組織になるのは必然です。
奇しくも粉飾決算で実刑を受けた人物でありますが、元ライブドアの堀江氏のような「長いものに巻かれない」、いわば組織にとっての毒になるような人物が必要です。
どうも少しまとまりに欠けますが、個人的な見解は以上になります。
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*1:教育ローンという名称を使うべきでしょう