物流と労働を取り巻くパワーワードの宝庫(書評:『現代思想 2018年3月号』
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いまは6月ですが……。
他所のブログ経由なので周回遅れです。6月ですが紹介しているのは2018年3月号。
現代思想という雑誌の感想です。
概要
現代思想 2018年3月号 特集=物流スタディーズ ―ヒトとモノの新しい付き合い方を考える―
- 作者: 田中浩也,若林恵,横田増生,今野晴貴
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2018/02/27
- メディア: ムック
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別のブログから2段階ぐらい経由しているので最初に言及していたブログがわからない。
- 経由1:ロジスティックス革命と1940年体制の終わり « マガジン航[kɔː]
- 経由2:福嶋聡コラム 本屋とコンピュータ 第186回
- 経由3:出版状況クロニクル120(2018年4月1日~4月30日) - 出版・読書メモランダム
物流に関して、Amazonの話から移動スーパー、東北の産業、有機農産物の流通、それから運送業の現場の労働者の視点とか。
海外の物流・流通に関する話題が無い*1のを除けば非常に盛りだくさんの内容。
対談、インタビュー、寄稿?か論説だかよくわかりませんが書きぶりも様々。シャッター商店街問題についての記事もあります。
イロモノ記事としては太平洋戦争中の、日本軍占領下のインドネシアの物流を分析した記事とか。
しょうもない保守論客のお世辞記事とは段違いに有益で示唆に富んだ記事が満載です。ビジネスアイディアのヒントにもなると思います。
感想など
巻頭の対談記事目当てで買いました。Amazonに関する話題は特に目新しいとは思えず。ブログ記事経由で概要を知っていたのもありますが。 物を運ぶ代わりに設計データを送って3Dプリンタで製造、という話自体は既知のネタだったし。
移動中のトラックの車内で3Dプリントするという特許については初めて知りましたが。
面白かったのは2つ目の対談と、移動スーパーの方のインタビュー記事。
ユニクロ潜入記事の方の話は物流に限らず労働の話に飛躍していますが、これはこれで参考になりました。
請負という働き方にもいろいろあるという視点は有意義。
なお、物を送る代わりに3Dプリンタで製造っていう話は以下の本にガッツリ出ていたはず。どちらかという未来予想かな。
限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
- 作者: ジェレミー・リフキン,柴田裕之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: 単行本
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外国人の書いた分厚くて読みのが辛い本です。
キーワード
巻頭の対談記事については、このエントリの冒頭のリンク先で業界の方の見解があるのでそちらを参照。
- コミュニティ最適化技術(p.14)
- ソースマップ(p.16)
- 地域経済分析システム(p.17)
- Amazonもコンビニも「外部化されたストレージ」(p.18)
- 台所が外部化されている(p.22)
- 「物」は「情報」に遅れて遣ってくる(p.44)
- 「おばあちゃんのコンセルジュ」(p.62)
- 「偽装留学」(p.106)
- 構想と実行の分離(p.110)
- 考えない知的労働者(p.110)
- 「忘れられた空間」(p.121)
- 「時間・空間の圧縮」(p.124)
- 「略奪農業」(p.155)
- 「自殺的過程」(p.156)
- エコロジカル帝国主義(p.156)
Amazonの北米物流施設の総床面積と日本のコンビニの総床面積がほぼ同じ、らしい。
紹介されているサービスなど
あとは省略。力尽きた。
読みながら考えたことなど
あくまでも個人の見解です。
再配達問題
有料化に賛成。再配達に追加料金が必要になるとすれば、宅配ボックスの普及につながる。
1回目の再発はタダにして、2回目から有料でもいいかも。
労働組合についての私見
- まず組合費の給与天引きを禁止すべき
- 産業別、職業別の組合が必要
- 一つの会社に最低二つの異なる組合
労働組合のない会社は法人税上乗せ、ぐらいアグレッシブにいく必要があると思いますね。
通販の問題と買い物難民の話
便利だからといって通販に頼ると、地域の小売業がますます廃れるというのはそのとおり。だけど末端消費者に流通インフラの意地の責任があるか、というのは疑問。商店街や駅前が栄えている必然性はないし、人口密度の低い地域に人が住む必然性もない。買い物が不便なら引っ越してもいいはず。
過疎地域からの引越し費用を援助するという解決策もあるし、過疎化対策なら住民税を人口密度に比例させるとか、本気で是正する気があるならやりようはあるはず。
いずれは過疎化して人工のボリューム自体が小さくなると移動販売も採算が取れなくなるだろうと思う。それに平日と休日、あるいは繁忙期かどうかで生活拠点が違うというパターンもあり得るし。
利便性やお金の匂いに合わせて定住せずに移動を繰り返すライフスタイルも断然あり。
まとめ
めったに買わないような雑誌を実物を見ずに買うのはギャンブルだった訳だけど、この号に関してはなかなか面白かった。
お目当ての対談とは別の対談とインタビュー記事のほうだったけど。
コンピューター関連の本と雑誌ばっかりだと良くないなと思う。ただ、政治系の話題はアイディアはあっても実行力がないので義憤にかられるだけであまり益がない気もしている。
- 作者: 酒井威津善
- 出版社/メーカー: 自由国民社
- 発売日: 2017/03/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: マーチン・ファンクレフェルト,Martin van Creveld,佐藤佐三郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
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*1:Amazonや一部の欧米企業にに関する言及は何箇所かありますが